菅平

朝4時に起きる。親指の爪のような月が見える。真っ暗な闇の中、友達と車で雪山へ向かう。高速道路には果てしなくネオンが連なり、時折、煌々と照らされた工場を通り過ぎる。朝日が上り、妙義山の荒々しい岩肌を赤茶色に照らす。碓氷峠のトンネルを抜けると家々の屋根は一面真っ白で、遠く雪山に囲まれている。リフトを上ると見渡す限りの雪景色で、低い角度から薄黄色の太陽が、雪を茂らせた白樺の木を照らし出す。きゅっと言う音と共に雪を踏みしめる。心が躍る。冷たく張りつめた空気とかすかな動悸とともに滑り降りる。爽快感の余韻に浸る。
しばらくすると綿のような雪が降ってきた。ヒンヤリとした綿飴を口に含む。手袋の上をじっと見つめる。見事なフラクタル構造を保っている。その構造は目に見えないところまで、ずっと繰り返されているのだろうか。雲の隙間から橙色の太陽がぼんやりと覗く。綿のような雪は煌めきにかわる。煌めきに覆われ、夢の中に紛れ込んだかのような錯覚を抱く。