縺れた毛糸

家の記憶

 
海の中に吸い込まれた夕陽を物憂げに眺める目
仄かにピンク色に染まった頬
微かに覗く白い項
 
もう、その輪郭の中は、ぼんやりとしているのに。
艶やかな...夢の中ではあまり言葉がでない。
 
縺れた毛糸は、煌めきや温もりの他にも
苦しくなるほどのせつなさも与えてくれる。
 
 

  • 2階からの眺め

 
どう思ってるの?
夢の中にいた僕は、うつつの言葉を求められ、
自分が発した言葉に、気持ちに縛られてしまう。
 
そんなことしなくても変わらないものってあるのに...
盲目となった僕は泣きながらそっと聞いてみる。
どこにいるの?
 
一緒にいるだけで嬉しくて、ただ、それだけでよかったはずなのに...
おなかの空いた僕はその仄かで微かなものをぱくっと食べてしまいたくなる。
それはね、食べるものじゃないの...
 
積み重ねること。積み重ねたもの。そこから描く夢。
おずおずと手探りで、音をたてて壊してしまう(暗がりの中に響く音)。
それしか記憶に残せなかったのかもしれない...
 
僕の貼付けたような笑顔はかなうべくもない。
歩くのが早い僕、求める手、
もう少し、そっと強く握り返したかったな...
 
どこにもいなくならないでね。(一緒に考えようよ)
そんな思いを託した言葉は、捩れ、やがて
躱すことのできない鋭利な刃物となってしまう。
 
 
 

  • でも、ありがとう。なんだろうな。

 
過ち。なんだろうな。自分であがなわなければならないのだろう。
大切なもの、大切な気持ちを守り続けることは難しい。
ただ、それでも、そうしてくしかないだろう?
 
虫の音。暗くなるのが少し早くなってきたな。
もういいじゃないの、毛糸さん。登場にはまだ早いよ。
秋の夜のトキメキを探したいのさ。