バナナフィッシュにうってつけの日

池之端

息が白く凍りそうな朝、僕は5分程
ペダルを漕いで、池の端まで辿り着く。
 
細波打つ池に、朝日が妙にキラキラと照り込み、
柳にぶら下がった短冊がぼんやりと映り込んでいる。
 
南側の池には、たくさんの焦げ茶色の大きなシャワーヘッドが並んでいる。
南側の池には、蓮の花弁がだらりと首を下げている。
 
バナナ穴は、確か、蓮が根を張っているあたりにあったはずだ。
そして、バナナフィッシュはその穴の中に潜んでいる可能性が高い。
あいつらは、バナナを78本も平らげるのだ。
 
棚に置いてあった本を、僕は手に取り、読みかえす。

ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)

ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)

 
今日という、バナナフィッシュにうってつけの日に、友達が2人遠くに行くことになり*1、誕生日の人が1人居て*2、そして、好きな本の著者の訃報をラジオが喋っていた。
 

*1:話そうとしても何を言っていいかわからず、悲しくなる。だからというわけでもないのだが、結局、何も言えずに今日を迎えた。また、いつものように「やぁ」と言えるはずなのだ。

*2:年老いた魔法使いのような人で、お昼過ぎからどがちゃがどおがちゃがと話していた。その晩、心地良さそうに焼酎を飲みながら、54になったのだと言っていた。