81.3

よつば

嫌なことが積み重なると、気づかない間に、身の回りの何もかもが色褪せている時がある。
ボディブローのように(と言ってもボディブローを受けたことはないのでわからないが)それはやってきていて、仕事等でテンションが上がっていたり、することが多いと、それに紛れて、その状態にあることを知ってるのにそれを知らない。
 
朝を迎え、ベットの上でしばらくぼーっとしてから、
顔を洗い、珈琲をいれ、煙草を吸う。
朝、ラジオをつけるようにしてみた。
流れてくる懐かしいメロディ、さりげない朝の挨拶、とりとめのない会話。カーテンの向こうに陽が射していることに気づく。部屋には壁や窓が白く存在するだけではない。見えたものに色あいが奔流のように傾れ込んでくる。
 

電車に乗る時や、仕事中に煙草を吸って一息入れる時、眠る前のうつらうつらとした時、携帯端末を利用して「青空文庫」を読む(芥川龍之介 蜜柑)。

私は外套のポツケツトへぢつと両手をつつこんだ儘、そこにはいつてゐる夕刊を出して見ようと云ふ元気さへ起らなかつた。

無論、携帯端末を取り出す元気がないときもあるのだが、ビルの隙間から覗く雲の形が某に似ている等と思ったりしつつ眺めていると、かすかな心の寛ぎを感じてくるのだ。
そして、こっそり読み終わった後、そこには、そこはかとなく、シトラスの香りが漂っている気がするのだ。鼻の奥の方に。
 
 

  • ペネタ型の雲

最近、自分の中で、雲の形当てが流行っている(宮沢賢治 蛙のゴム靴)。

蛙どもは雲見をやります。
「どうも実に立派だね。だんだんペネタ形になるね。」
「うん。うすい金色だね。永遠の生命を思はせるね。」
「実に僕たちの理想だね。」
 雲のみねはだんだんペネタ形になって参りました。ペネタ形といふのは、蛙どもでは大へん高尚(かうしゃう)なものになってゐます。平たいことなのです。雲の峰はだんだん崩れてあたりはよほどうすくらくなりました。

「積乱雲(入道雲)。ペネタ形は、気象用語のぺネトレーティヴ・コンベクション(貫入性対流、雲が垂直方向に気層を貫いて発達していくこと)からの造語という説がある」
 
 

  • 89.4

全くどうでもいいことなのだが、学生時代に京都の北山の近くに住んでいたので、6年近く「α-station 89.4 FM」というフレーズを聞いていた。だが、一旦「81.3 j-wave」という響きが頭に刷り込まれると、そのフレーズを口ずさむことができないのだ。