夜のラーメン

渋谷のラーメン

はてさて、リリースミスである。
早朝の電話が何かをつぶやいている。僕には深夜のテレビが終わった後の波の音のようだった。夢現つの中、思い返すと、どうもシステムが動かなかったらしい。やばい。まぁどうにかなるだろう。と気を落ち着けて会社へ行き、謝ったり、笑ったり、前向きにぱたぱたとプランを立て遂行する。
<削除>
動かない。
もう1度、<削除>上記を繰り返す。焦りに徐々に汚染されてくる。
動かない。
もう1度、<削除>上記を繰り返す。周囲のやるせなさが僕の気持ちに紛れ込んでくる。
動かない。
やるせなさは、隣の席の方のカップラーメンとなって現れた。ごめんなさい。頑張ってくれようとしている。何かちょっと「自分の違和感」を覚えたが、状況を判別をして遂行する。
もう1度、ロケーションを変えて集り、上記を繰り返す。逃げ出したくなる。
諦めかけた頃、
動いた。
喜びと感謝と安堵。
解決を振り返り、この問題の影響を検討する。タクシーで帰りぐっすり寝る。
 
でも、「違和感」は何だったの?
翌朝コーヒーと煙草。自分の意識が覚醒してくる。
「なかった」のである。
「ラーメンの匂いがなかった」のだ。
そのイメージだけでも、涎とウキウキ感に繋がり、その匂いを想起できるもの。
しかし、その時、僕は匂いを感じていなかった。どう記憶の痕跡を辿ろうと結びついてはいない。
自分の鼻を捥ぎたい。
喪失感と自分を放棄したい気持ちが蔓延する。
地下鉄から出ると高いビルの合間に空が見え、車、信号、工事現場の音そして排気ガスや埃の匂い、突き刺さる寒さの中の日差し。
まぁまた一日を始めよう。