玉の井を歩く
夕暮れの影は、見えなくていいものを隠してくれる。
本を読んでいるとき、あたまの中の映写機では物足りず、無性にそのシーンを補いたくなるときがある*1。それを映している間、あたかも、そのときの感覚が持続するような気分になるのだ。
本を片手に、地下鉄で浅草へ、伊勢崎線に乗換え、隅田川を東へ*2。百花園を歩く、縁台に腰かけ飲み物を手に、浴衣姿の女が灯籠をつけるのを眺める。白鬚橋あたり赤い雲の中、新しい塔が見える。
大正通りを抜けて、いろは通りへと歩きつづける*3。
- 作者: 永井荷風
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1991/07/01
- メディア: 文庫
- 購入: 5人 クリック: 89回
- この商品を含むブログ (67件) を見る