玉の井を歩く

東京新塔

夕暮れの影は、見えなくていいものを隠してくれる。
本を読んでいるとき、あたまの中の映写機では物足りず、無性にそのシーンを補いたくなるときがある*1。それを映している間、あたかも、そのときの感覚が持続するような気分になるのだ。
 
本を片手に、地下鉄で浅草へ、伊勢崎線に乗換え、隅田川を東へ*2。百花園を歩く、縁台に腰かけ飲み物を手に、浴衣姿の女が灯籠をつけるのを眺める。白鬚橋あたり赤い雲の中、新しい塔が見える。
大正通りを抜けて、いろは通りへと歩きつづける*3

濹東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)

濹東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)

*1:安易だろうか... だが、その情景が自分の中で妙にしっくりすることがあるのだ。

*2:濹東とは隅田川の東。現在の向島/墨田のあたり。荒川と北十間川に囲まれる。

*3:2つの商店街には、布団屋が4軒もある。やはり、むかしは貸し布団屋であったのだろうか。路地裏にはスナックやパブがならんでいるが、電気のつく店は少ないようだ。路地の影から「ねぇ」と。