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木洩れ日

病院のところでおばあさんが
ほおずきを売っていて
それがこわいのです。*1

こわい、と思うことがあると、僕の中の僕が、駆り立てられるようにして出て行く、軽々しく、にやつきながら。僕の中に残った僕の目は虚ろになり、おどおどとしている。
鼻先に花をあてがい深呼吸をすると、出て行った僕が戻ってくる。でも、時々、どちらが本当なのか、本当にわかれているのかすら、わからなくなる。
 
自分の記憶の中の自分すら怪しいのだ。焦ったら何かが台無しになりそうな気がする。でも、それぐらいわかっていれば充分だろう?

*1:陽炎座(映画)」の一節で、一見、ふつうなのだが漠然と、その中に「こわさ」がひっそりと存在している。